「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」不可逆の少年時代

ループものが好きだ。タイムリープが好きだ。


今でも多くのタイトルに大きな影響を与え、そのジャンルの金字塔と言われるYU-NOがずっと気になってはいたが、なかなかプレイすることができなかった。
かつてソフマップの中古売場で見かけたelf大人の缶詰はプレミアム価格がついており、いつか…と思っている間にWindowsのバージョンは上がり、時代は巡り、elfは倒産し、最初にこの作品を知った時点から10年は経ってしまったと思う。


その間に菅野さんの作品には触れており、EVE、サイファー、ミステリート、探偵紳士あたりはプレイした。どれも面白かったが、この中だと個人的にはミステリートが好きだなーと感じた。後から知ったが、ミステリートは菅野作品の中でもキャラクターを立たせることを意識して作られた作品らしい。つまるところ、普段の菅野作品とは毛色が違うのかも。

 

そして2018年(発売日に買って1年寝かせてしまった)初めてプレイしたYU-NOは、うーん、言葉を恐れずに言えば、いろいろなギャップがすごかった。
たしかに20年前にこの作品が存在していたこと、そして20年前の作品なのに今プレイしても面白いこと、これはものすごいことだとは思う。


ただ、「すごい」「おもしろい」という驚きの重きが置かれているのが、シナリオよりもシステムや世界構築の部分が大きかったのでは?と感じてしまった。
特に異世界編はやたら壮大で時間的にもかなりの年月が描かれているのにあらすじのようなスピードで物語が駆け抜けていき、主人公に感情移入をすることができなかった。
現代編は2日?程度の出来事をあれだけ綿密に描きシビアな時間経過の中を何周もさせられて、そこから突然の大味の異世界のギャップ。

本来異世界編をメインにしたかったが時間が足りずこういった形になったという裏話も見たが、異世界編の物語の動きに感情移入ができないせいで、=根幹の部分が陳腐に感じられてしまって勿体無かった。

 

以下、それぞれのルートの感想など。


<現代編>
■亜由美
義母兼未亡人。真っ先に攻略した。
亡くなった(亡くなってはいないが)夫より主人公と年が近いため、他ルートではセクハラ放大の主人公が初恋にドギマギする少年のようにおとなしく壊れ物を扱うように振る舞っているのがかわいかった。
彼女の人生の中で5本の指に入りそうな大変な2日間が描かれているというのもあるだろうが、自立しているようで他人への依存度が高く、受け入れて抱きしめてくれる人を常に探している女性に見えた。
その反面、会社での振る舞いや、メディアに映った自分がどう切り取られるかまで意識していたり、主人公に女を感じさせないために自分の一人称を「亜由美」にしていたり(?)と策士だなあと感じるところもあり。
一人称「亜由美」が女を感じさせないように…っていうのがよくわからなかった。それこそ主人公をめちゃくちゃ子ども扱いしている無神経な年上のフリをするなら「お母さん」とかじゃだめだったのか?理系で女が少なそうな環境由来のオタサーの姫的な癖があるのではと思ってしまった。
しかも「女を感じさせないように」という意識が働いていたということは、少なからず主人公が自分のことを女として見ていることを理解していたわけで、そのうえでああいうやりとりしちゃうんだ…。

性格が悪いわけではないけど利己的で、自分のために動くけどできるだけ悪く思われないように予防線は張っておきたくて、ただ基本的には相手を信じる、それゆえのチョロさみたいなものが見え隠れしていて、いかにもな甘い女の子の生々しさがあった。この人は、まだまだ女の子でいたいんだろうなあ。
総合して聖女になりたがる一般人みたいだなあと思えて、ヒロインの中では一番好き。異世界での役割もなんかそんな感じでしたね。

 

■美月
人気女子アナ兼産業スパイという設定がすごい。
亜由美ルートでお世話になったのでなんとなくカッコイイと思ってプレイしたら裏切ることしかしてこなくて笑った。
何かに操られていた!とか悲しい過去!とか愛の力で改心!とか一切なくただやりたいようにやってるからこの人は根っからこういう人なんだな、という自由形が良いと思います。
今のギャルゲ(テキストゲームでヒロインごとに物語が分岐するものの総称)でなかなかこういうヒロインいないよね。商業的に難しそう。
プレイしていて彼女の感情に理解が及ばなかったのでもう好きにしてくれ~という感じだった。主人公と寝た後に「君の父親ともやったから息子ともやってみたかったw」とあっけらかんと言うのは本当すごい女だなと思って好感を持った。


やってみたかったwではないけど、どこか父親(夫)と同じような似たようなものを得られないか確かめるような思いで主人公と交わったのは亜由美も同じなんだろうなーでも亜由美はそういう言い方はしない狡さがあるんだけどなー。
美月ルートのラスト、研究所から宝玉を使って移動する際にアシストしてくれる亜由美はかっこよかった。父親(夫)の手紙であれだけ強くなれるんだから、やっぱり亜由美が愛してるのは最終的には父親(夫)なんだろう。

 

■香織
校長の愛人、主人公の元セフレ。ただれている。
この人の場合は操られていたりと不憫ではあるけれど、荒れ狂ってる時期の高校生に手だしてただれちゃってる時点でなんかなんともいえないメンヘラちゃんの匂いがする。
ゲーム開始時に主人公との関係は解消されているが、個人ルートでは関係性が中途半端に復旧されてるのがなんだか泥沼感ある。むしろ泥沼感しかない。


亜由美ルートで亜由美とギクシャクしてる時に主人公にキスしてきたりと、そんなつもりはなかったと言いつつそういう波乱をわざと起こして悲劇の登場人物になりたがるタイプの女なのかな、と邪推してしまった。
高校生の男の子が思い描く大人の匂いのするアダルトなお姉さんを具現化したらこんな感じなんだろうけど、誰が好きなのか、そもそも何がしたいのかよくわからなかったのがマイナス印象。操られてたから仕方ない…(伝家の宝刀)。
主人公が主人公で彼女にそれなりの情を持ってしまっているのでプレイしていて温度差はあった。

 

■澪
同級生のツンデレ女子。主人公のことが好き。
かわいくて無垢でやっとギャルゲのヒロインっぽい子が出てきて嬉しい。
しかし、歴史や地理の知識に長けていておそらく頭はいいのだろうけど感覚的な要領が悪い。学生・日常生活の象徴サイドのヒロインなので、彼女の考察はいいところまで行くけど結局大きな物語の中で彼女自身に与えられた役割というのはほかのヒロインより少なく、やや蚊帳の外の印象を持った。
澪ルートで登場頻度の高い結城も可哀想なキャラで、中盤の張り紙の件も可哀想だしそこから挽回することなく最終的な結末を迎えてしまうのも可哀想。
澪は考古学オタクなので考古学の学者である主人公の父親を尊敬していて、その底上げがあって主人公の好感度も高くなってるような気がしないでもない。これは澪に限らずどの登場人物もそうなので、父親が英雄であること・偉大な英雄の息子が主人公であること、が作品の重要な要素なのかもしれない。
全ての事象はつながっていて、等しく描かれているので正史もクソもないが、個人的に澪のエンディングの正史は、澪を地上に逃した主人公が地下に引き返すものだと思っている。人一倍探究心を持った彼女はしかし物語の核心に触れることなく、1人悲劇のお姫様として生きていく。

 

■神奈
いかにも謎がありそうな感じの転校生。売りやってる綾波
無口系ミステリアスな一人暮らしの女の子で、今のギャルゲ文法でも全然ありそうなストーリー展開とキャラ設定だった。変わらない長く愛される味なんだと思う。
謎がばらまかれるだけばらまかれるが、彼女のルートで明らかになることは少ない。異世界編へのインタールードのような役割なのかも。
搾取・消費されて生きている女の子を救うのはボーイミーツガールストーリーの永遠の王道だし、冷たくなった神奈に超念石を与えて目を覚まさせるのは童話みたいで良かった。でも死にそうなときに外でやるなよ。
異世界編をクリアすることで神奈の出生の秘密がわかるようになると、結局不幸の種をばらまいたのが主人公でなんとも言えない気持ちになる。マッチポンプである。

 

■恵里子
保険医の姿で現実世界にやってきている次元パトローラーのお姉さん。かっこよくてお茶目でかわいい。最高。
いかにもな雰囲気でいろいろと事情を握っているので作中で非常に助けになった。彼女の愛する恋人はアーベルなので、主人公と恋仲になるルートが存在しないというところに信念を感じられてよかった。影の主人公として特別な存在感があった。
アーベルというと菅野さんの立ち上げたブランド名を思い出してしまう。彼の名前からとったものなのだろうか。


異世界編>
まず主人公の行動理念とキャラクターがかなり変わってしまった気がする。

現代編では口先ではセクハラ小僧ながらも理知的・理論的な思考を持って動いているように感じたが、異世界に飛んでから理論的思考が消滅し本能直結型となる。何故。突然大野生時代に放り込まれたため順応したのかもしれないが、さすがにどうよという行動も多く置いてきぼりになることも多々あった。
人物が変わること自体が問題なのではなく、なぜ・どうしての部分が描かれないまま、原因から結果へジャンプしてしまっているというか、骨組み丸出しで肉付けが無いというか。
たとえどんなにクソ野郎になっても、そうなるだけの理由や葛藤が描かれていれば物語として見られたのにという気がしてならない。

 

■セーレス
異世界を救う巫女。言葉が話せない。
主人公の子を産み、妻となるヒロイン。巫女、お嫁さん、お母さん、「そういうもの」をそのまま描いた感じ。もちろん最高にかわいいが、物語のための舞台装置感が否めない。
何故ボーダー付近をさまよっていたのか、なぜ主人公のことを愛するようになったのか(あの辺境に男女が2人だけだったからだとしたらアダムとイブのようなことが描きたかったのかと思わなくもない)、
また、彼女の性格を考えると自分が犠牲になれば世界が守れるなら受け入れそうなのに、何故そもそも巫女の仕事を拒んでいたのか、など
話せない(話さない)ことが多いので何を考えているのかよくわからない。そこがいいのかもしれないけれど。
巫女の禁を破って言葉を話したこと、男と交わったことで押しかけてきた兵士に乱暴をされて自害する。この辺も主人公への今後の動機づけのための要素でしかないように思えてしまって、セーレスとはなんだったのか、主人公と切り離したセーレスという1人の人間としてのインパクトが薄い。平穏な夫婦生活のシーンがほぼ描かれていなかったので思い入れもしづらかった。

 

■ユーノ
主人公とセーレスの間に生まれた娘。
異世界の人間なので成長が早く、4年ほどで成体(大人の女性)になる。セーレスと同様にユーノも描写が少なく、主人公が愛娘としてかわいがっていたのは間違いなかったが、どこか愛玩動物のように見えた。


精神的には4歳程度ながら肉体は大人に成長しているので、思考と肉体のアンバランスさが相当あるのもひっかかった。主人公のことを好き好き言っているのもまさしく家族愛と異性愛をはき違えているように見え、それだけならまあかわいらしいものもあるものの、父親である主人公がチョイと苦悩しただけで簡単に手を出すのもどうかと思ってしまった。
作品タイトルが彼女の名前なので、この物語はユーノのためにあるのだと思うが、この描き方ではそのあたりもモヤモヤ。
現実的に娘がパパと結婚する~とか言ってるのはせいぜい幼稚園生くらいまでで、成長して思春期になれば反抗期を迎えたり外に目を向けて社会性を身につけたりしてそんな幻想はあっけなく終わるのだ。泡沫の夢なのだ。
それを、思考4歳肉体17歳くらいの社会性のない娘がパパに抱かれるのを良しとする世界観がなんだか気持ちが悪かった。


加えて、ユーノがちょくちょく口にしていた「ママは死んでしまったけどユーノの中にいる」というような発言、精神的なつながりを意味していたり、巫女としての本能的な何かだったりするのかもしれないが、この描写があるたびに、巫女としても女性としてもユーノがセーレスの代用品のように見えてしまった。
幼いゆえに見える世界も狭く、分別の付かない空洞のようなな彼女にアイデンティティなどまだ存在するはずもなく、そこに干渉できる唯一の他者である主人公が、望まれてとはいえ妻にしたのと同じ愛し方をしてしまったのは、彼女を狭い檻に閉じ込める行為に他ならないのではなかろうか。
YU-NOという作品で最も重要な、最も描きたかったシーンがここなのだろうことは理解できるが、そこに至るまでの描写の薄さが、セーレスとユーノという世界の根幹を空っぽな女の子にしてしまっているように感じた。

 

作品を通して賛否両論となった大きなポイントは、クンクンのカニバ描写とユーノとの行為の場面だという。クンクンに関しては、ペット(家族)と食用動物のジレンマとして現在もよく取りざたされるテーマなのでそれほど抵抗感はなかった。
が、それよりその後の主人公の貞操観念というか理性の無さが何より気になってしまった。あの状況でアマンダと関係を持ったのも、神奈を誕生させる設定ありきのために見えてしまったし、やぐらが丸見えで感情が乗っていない、乗っていけない。常に生命の危機的状況にさらされているので種の存続を優先する本能かもしれないし、神話に出てくる神様の行動のようでもあるけれど、もう少し描写が欲しかった。

 

もし、この作品に触れたのが10年前だったら。

年齢が近い主人公により感覚的な感情移入ができたかもしれない。

10年前だったら、今より余計なことを考えずに物語に浸れたかもしれない。

それでも私は10年という時間を過ごして何かを蓄積してしまった。ユーノと同じように誰かの娘だった私は、その記憶を自分の中にとどめながら自分なりの意思や凝り固まった固定概念やなんかを蓄えた大人になってしまった。

知ったものも得たものも、それを得る以前に戻ることはできない。時間は可逆、歴史は不可逆、そして感覚もまた不可逆だ。
リメイク版YU-NOの発売にあたり、オリジナル版に触れたときの興奮を熱っぽく語ってきたかつての少年たちがとてもうらやましかった。この物語は、あの時代に少年だった彼らにとっての秘密基地であり続けるのだろうな。

「きんとうか」恭ルート・途中までの覚書

恭が本当にちょっともう無理なので覚書というか殴り書きというか一旦まとめる。終わってから書きたかったけど胸がいっぱいというか脳が溶けそうというかとにかく抱えきれない。

 

恭は共通ルートでも描写が多かったので最初から読み直しました。

 

<ファーストコンタクト~共通ルート>

・幼少期に颯太と一緒に遊んだ記憶がない

・家に居場所のなかった自分を迎え入れていた花さんにとてもよく懐いていたので、花さんに会いにも来ない孫・颯太のことはどちらかと言うと嫌い

・花さんが亡くなってからノコノコやってきた颯太に怒る

・怒ってたんだけど、颯太が意外とちゃんと島のしきたりを理解しようとするし、なんか危なっかしくてほっとけないし、悪いやつじゃなさそうだし、「好き(弟として)(人として)(友達として)」「すごい(子供を褒めるお兄さんが言うやつ)」を連呼されて、誰かに必要とされたい・愛されたい心をガンガン揺さぶられて絆される(かわいい…かわいいよお…ほんと悪い女に引っかからないでくれよお…颯太自体が悪い女みたいなもんだけど…)

・恭は人懐こいけどどこかで人との距離のとり方が下手そうなので、こんな風にずっと一緒に居て、温度感があって、心地よい相手は颯太が初めてだったのかな…

・寝ぼけた颯太に抱きつかれて真っ赤になってトイレに走る「俺がクールで紳士だから良かったものの、他のやつにはするなよ」かわいすぎる…この時点でもうそういう意味で好きになってしまっていたのだろうか。とすると恭は共通ルート時点で颯太に恋しちゃってることになるのでは…と思ったけど宗定も愁も最初から好感度マックスなので全員そうだ。アハハ

・海の祭りで宗定さんに食事に誘われたあとに恭の漕ぐ自転車に2人乗りするところの会話が本当にかわいくて颯太が魔性の女すぎてなんなのか「ほくろがかわいい」だめだろうもうこれ

 

<個別ルートIN・「好きなやついんの?」>

・島の儀式で松明を持って練り歩く際に颯太に「好きなやついるの?」と尋ねる恭(かわいい)これまで付き合った女の子の人数とか、不躾でへたくそな感じでポロポロ質問しては一喜一憂してめちゃくちゃかわいい(かわいい)

・「君は?好きな子いるの?」「…最近できた」「へえ!どんな子?」「…別に。普通」かわいすぎてのたうち回った

 

<通夜祭・「どこにも行くな」>

・恭が通夜祭で花さんの家にいられない時に「どこにも行くなよ」念を押して外出したうえに出先から1時間おきに「どこへも行くな」電話……心配なのはわかるけどどうしてこんなに直球でへたくそなんだこの子はかわいい…かわいい……

・暇にしてた颯太が彼岸なので家族のことを思い出してお供えのようなご飯作って1人で食べてるところに帰ってきた恭が、寂しくさせた!ウワー!!となって抱きしめてくる(かわいい)

・一日家に居て退屈だったから外に出たい、と言われて2人で夜の散歩へ

 

<夜の散歩~海で告白「アウトロは来ない」>

・相変わらずどこへも行くなモードなので手を握って離してくれない恭。2人して照れながら、男二人で手をつなぐ恥ずかしさからこれならセックスした方がマシだ、と思う颯太(???)

・海で夏子に会い、路夫への変わらない気持ちを聞かされて感化されたのか、2人きりになった途端「俺の好きなやつの話をする」といきむ恭(かわいい)

・颯太は基本的に自分のことだと思ってないで聞いてるので途中で混乱のすえ、「無理だよ」「ごめん」鬼

・断られても「意識されてないのわかってたから、意識してもらうために言った」「本当は好きって言ったらはい、って言ってもらえるようになってから言いたかったけど、颯太が苦しんでるからなんとかしたくて自分の気持ちで颯太をここに留めたい」

・宗定や愁は今だけでもいい、という刹那感を持って恋愛に落っこちてたけど、恭は終わるものだなんて思ってないので「永遠に好き」と何度も主張してくる。脆くて浅はかで力強くてバカで本当にかわいい。たまらない。移ろいでいってしまうものを颯太が悲しむのなら、自分が颯太を好きな気持を永遠としてあげる、と。いじらしさがやばい

・宗定や愁相手のときは流されるだけ流されて性別なんて気にもしなかった颯太が「いや男同士だし」とか言って断ろうとするのが新鮮だった。年功序列というか男のプライドというか、子犬ちゃんだと思ってるから場の空気に飲まれないのか。理性や世間体やなんかも強く出てたのかな…あと年下と付き合ったことがないそうなので颯太は年上に流されるのが好きなのかもね…(この辺総合してものすごい逢坂壮五み)

・寝る前に「嫌なら違う部屋で寝るけど」「気にしないでいいよ。ところで君は俺に欲情するのか?」という颯太さんのぶっとびレスポンスを経て互いに眠れない夜(健全)を過ごす

・年上のお兄さん相手だとデロンデロンに流されてかんたんに身を明け渡して大人の恋愛してた颯太が、恭の一手一手に引っ張られて中学生みたいなギクシャクして丁寧で甘酸っぱい雰囲気に飲まれてる片鱗が見えてかわいい

 

<嫉妬・喧嘩・渡利家訪問・キス未遂>

・宗定や愁に触られると気持ちよくなって声が出てしまう現象を恭に告げてドン引き(というか嫉妬)される。「おまえ、色情狂なんじゃねえの」「ああ、そうかもね(マジギレ)」

・颯太が「(あんなに永遠をくれるって言ったのに)短い永遠だったね」と繰り返し繰り返し言ってたので、永遠をくれるというのは相当魅力的な提案だったのだなあ、なんだったら結構恭のこと好きになってるんじゃないのかなあ、と思いつつ、現状自分に恋愛感情を持ってるとわかりきってる相手の好意に甘えてユラユラしてる状態なので若干イライラします。でもそこが颯太さんの魅力なんだ

・恭の謝り方がストレートで許さざるをえないやつですごい苦虫を噛み潰したような声を上げた後に「いいよ」と言う颯太さんのプライドの高さおよび母性。ちょっと横に寄って「怒ってない?」と聞いてくる年下属性MAX子犬チャンの恭、な、なんだこの四葉環み…しぬ…

・渡利家の恭の部屋に颯太を招き入れて2人きりだな…とかドキドキする恭とそれ見て「うちでもそうだったじゃない(笑)」の颯太。「俺だったらベッドに誘おうとする女の子の向かいには座らない、横に座る」と言われていそいそ横に移動してくる恭がかわいすぎるし颯太のそのからかってんだか一般論だか感情がないんだかわからない発言はなんなんだ。ずっと何なんだこの人。プレイヤーキャラがエッチなお姉さんで耐えられない。

・やっと颯太が恭の空気に流されそうになってキス…と思ったところでお菓子の皿を下げに女中さん(路夫さんの母)がやってくるという実家でイチャイチャしようとしたらカーチャンという展開が歯がゆくて歯が溶けそうになった。

・廊下に逃げ出して恭父視点で過去の恭母と対話、愁に介抱されて部屋に戻ると司の話を聞こうとした恭と愁が兄弟喧嘩

・文庫蔵で雨宿りしようとしたら入り口が閉められてしまい、閉所恐怖症の恭を宥めながら二階の小窓から飛び降りて入り口の戸を開けて救出する颯太。二階だということを忘れて飛び降りたのは緊急事態だから仕方ないけど、血まみれになることに一切ためらいのない颯太さんネジがぶっ飛んでるなあ。過去を思うと本当にアレなんだけど

・幼いころ愁に閉じ込められたことがトラウマで閉所・暗所が苦手な恭

・お互いの怪我の手当てをしながら「こんなかっこ悪いとこ見せたらもう好きになってもらえないよなあ…」としょんぼりする恭がかわいすぎてかわいすぎて。「本当は俺が颯太を助けたかった」「俺は男だから王子様はいらないよ」「だとしても助けになりたいし、そしたら好きになってくれるだろ?」ああーもう

・もう一度正式に恭を振ろうとする颯太(鬼)に、「何度振られたって朝にはまたお前のことを好きになってる、愛してる」と答える恭。なんかもう本当に初恋で…人生をかけてすべての0が1になる瞬間が今なんだなあっていう全速力で愛を伝えてきてほんとうにほんとうに本当にかわいい。

 

毎日ちょっとずつ読みながら、読み返しながら、勿体なくてチマチマ進めている。都志見さんフレーズで言うと砂糖を舐めるように。恋愛ゲームやっててこんなに早くイチャイチャしてるところが見たい、と思うカップルはなかなかいない。それでいてエンディングを迎えたくない。つらい。

「きんとうか」愁ルートを終えた

颯太がレバーが苦手な理由が判明した。

犬小屋、泥棒ごっこ、ホラー映画…今のところ誰も幸せな過去を過ごしてないぞこのゲーム。さすが。

愁ルートのテーマは孤独、別れ、死んだ者に残された人、とか。
「孤独中毒」「人を欲しがる乞食」あたりの言葉が印象に残る。

愁さんはストレートにBLにおけるメガネお兄さんのキャラで、(宗定さんもストレートなBLにおける朴念仁攻めキャラだけど)付き合う前から駆け引きのようにキスしてきたりとか、そんでもって舌からタバコの匂いがしたりとか、それまで山奥に生息するゴリラと初めて火打ち石を打つ共同作業のような恋愛をしていたので、やだ、オシャレ~~~~~!!って高低差にまず衝撃を受けた。
私はどちらかと言うと攻めは炙ったゴリラがいい派の腐女子なので、喋るのが面倒になると口を塞ぐためにキスをしてくるようなメガネ攻めは受けちゃんの相手に認めませんよ、プンプン、という感じで進めてたけど、途中であーこの人(愁さん)もバブちゃんのまま時が止まってるところがある攻めちゃんなんやな…と思って許しの心になった。

宗定ルートで気になってた「血を流す女の幽霊」とそれにじゃれつく「大きな灰色で片目に傷がある猫の幽霊」は愁ルートで正体が明かされて、浅倉の母(逢巳先々代の愛人、離れで亡くなった)とその飼い猫(寅吉)だった。浅倉には亡くなった寅吉の姿が見える?声が聞こえる?ようで、彼が島の猫達に愛されているのもこのため。
浅倉の母は当時化け猫遊女とか言われていたらしく、中盤で颯太が浅倉母とチャネリングしてしまったのかやたら浅倉にベタベタしだした際に、ヤレヤレ遊女属性までゲットしてしまうのか…と最強受けたゃの階段を登っていく颯太をいっそ頼もしく思ったりしました。

双子幼女コンビに「逢巳のご当主様に新鉢破り(処女を抱く儀式)されないように気をつけるんだよ」と言われる成人男性 鈴村颯太…
・颯太のばあちゃん、花さんは逢巳の先々代に横恋慕されて新鉢破りをされたらしい
・花さんに恋をしたが叶わなかったことで、鬼のようになっていく逢巳先々代
・夏子「せめて、愛人なんか外に作ればいいのに、家に連れ帰って住まわせたりして……」
 夏子「女にとっては地獄よ。本妻が愛人と同じ家の中にいるんだもの。私なら両方絞め殺してるわ」
これはさあ…そのまんま宗定ルートの愛人エンドじゃないか…(愛人エンドの夏子さん颯太にマジギレしてたもんね)きっと先々代も宗定さんみたいに不器用で優しくてまじめな人だったんだろうなあ…悲恋でおかしくなって…という歴史と業は繰り返す展開にゾクゾクした。

宗定さんと颯太がまぐわってるとこ見るの大好きなオバケは浅倉さんの母だったのか…自分と同じ境遇だからね…

さゆり「ねえ、颯太さん……ほしい、ほしい、って叫んでると、誰かが来ちゃうよ」
ゆかり「颯太さんのちぎれたところに、誘われて来ちゃうんだよ」
司を失った魂のことを言ってるんだけどなんか男を惹き寄せる甘い汁でも出てそう。

「1人目は人生を破滅させて、2人目は地獄に落とした、3人目とは心中でもするか。」
愁さんにかつていた友達の話。
1人目は柏木・でも本当はお互いを愛していたよ、最後の朱野のきんとうか畑で出会える人。
2人目は司・亡くなった司を求めて逆おくりをしてしまった。多分宗定と一緒に。(共通ルートの最後の方のアレかな?とするとその辺の描写が曖昧だった颯太ももしかしてなんかされてる?)
3人目は、2つあるバッドエンドのどちらもで颯太が先に命を落としてしまうので、後を追って心中しようとするところと、ふたたび逆おくりをしようと死体を抱えて朱野で横たわる姿が見られる…本当にバッドエンドが美しい…

颯太の孤独がクローズアップされてたけど、そこに目が行くということは同時に愁さんも同じように孤独を恐れ、別れに怯え、後悔で1人きりになっていて二人は鏡のようだなあと思った。ダブル受けの百合カップル。
最初の方で、お互いが気になる相手にかける口説き文句を教えあう場面があって、
愁さんが「あなたのことが知りたい」、颯太は「嫌なことはしないから」「そばにいてほしい」
これを、終盤に颯太が愁さんに「あなたのことが知りたい」愁さんが「嫌なことはしない。そばにいてほしい」って返す流れが見事すぎて素晴らしすぎてちょっと膝を打ちました。
相手の言葉を返し合ってるだけじゃなくて、颯太の「知りたい」という問いかけに対して「そばにいてほしい」って本心を返してるんですよね!ダブルミーニングでね!二人は孤独な孤独中毒者だからいけないと思いつつも同じ願いを抱かずにはいられないという鏡合わせ仕様が素晴らしかった。

バッドエンドへの分岐で、恭に頼んで愁さんの写真をもらうか否かという選択肢があって、写真を貰わないことでグッドエンドに到達できる。エンディングに入ってから別れを惜しむ颯太に愁さんが「自分の持つ孤独とちゃんと付き合っていこう」と諭す場面があり、写真を見て寂しさを紛らわすより、次に再開できる未来に思いを馳せることを愁さんは望んでいるのかな、と思った。

宗定さんルートだと終盤おもに腕力で敵わず囲われ囚われの姫感がすごかったけど、愁さんはわりと脇が甘いので颯太が自分で考えて動けたり、宗定さんから見た颯太は天使化が激しく「オマエ…オレノ…ヒカリ…」って感じだったけど、愁さんから見た颯太は地に足がついてるからこそ大切に思っている人間みたいな…なんだろう…愁さんもだいぶ過保護だけど…そういう違いもありつつ、やはり島の二大当主なので凸凹のように要素が逆だったり、明かされる謎も入れ子になってたりと噛みごたえがあって面白かった。
宗定ルートより死んでる人の姿がよく見えた気がする。
最後に朱野のきんとうか畑で1番心残りのある亡き人と再会する、というのは誰のルートでも同じ展開なのかも。恭にとってその相手は誰なんだろう。

必然的にご兄弟なので恭の出番が多く、もう本当に恭は可愛いな~~~~~可愛いな~~~~~お兄ちゃん思い出優しくて人が傷つけられると誰よりも先にカッカしてワンワン泣いてなんていい子なんだ恭は~~~~~と思う場面が多すぎて恭ルートが楽しみで楽しみでヤバイのでこの辺で感想を終える。

「きんとうか」宗定ルートを終えた

アイドリッシュセブンのストーリー構成というか人間構造、社会構造みたいなものにはまったので、同じライターさんの作品ということでプレイ。
公式サイトの人物紹介見ても誰がどうという感想も特に抱いていなかったので(良い年下攻めがいることは気になった)、とりあえずメインヒロインっぽい宗定さんから攻略していくことにした。おいしいものは後回しにしたいタイプなので年下攻めは後に回す。

現世から切り取られたように風習を大事にしてる島での祭事とか禁忌とかに関する情報がバンバン出てきてテンションが上がる。すごい。ひぐらしとか死体が歩き回ってないSIRENみたいな世界観、とても好き。BLゲームでこういう雰囲気をあまり見たことがない気がする。

東京で暮らす鈴村颯太が、祖母が亡くなったのをきっかけに子供の頃に夏が来るたび帰省していた島に戻るところから物語が始まる。

公式サイトで気になった年下攻めは恭くんと言って、実直で血の気が多くてでも世話焼きで正義感が強くてめちゃくちゃいい子だった。しかも照れ屋。照れ顔の立ち絵がすごくかわいい。なんてかわいいんだ。主人公の颯太が魔性の女みたいな相手の軟かいところに絶妙に触れて気を持たせてフッと離れるような返答をするクソアマタイプなので(魔性属性なのは公式設定だと後に知って笑う)、そういうのにいちいち照れて「ばっ…!」とか言うのがかわいすぎる。


攻略キャラが島を統治する2大一族である逢巳・渡利の当主それぞれ、渡利の次男である恭、謎の男(司)、というバランスなので、渡利当主の愁と弟の恭の差別化はどうするんだろうと思っていたら恭は颯太の家に寝泊まりする展開でなるほど!となる。当主それぞれが島のしきたりを熟知している長であるのに対して、島を出て大学に通っている「染まりきってない」恭は、日常の象徴みたいな立ち位置なのかも。

颯太、恭、司が一緒に暮らして、司が消えて3人の共同生活が解消されるまでが共通ルートだと思う。司の正体は1周目の時点でだいぶわかるけど、伝奇ものっぽくて気になるヒキでおわり。自我の入れ替わりでゴチャゴチャになってたからミスリードかもしれないが、司が本物の颯太で、今颯太と名乗っている人物が違うなにかなのでは…とも思ったけどたぶん2人とも颯太だと思う。BLでニーアやアビスのような話だったらつらすぎる。

逢巳宗定さんが正式に登場するのは結構遅い。
島では葬式は穢れにあたるため、逢巳の方々は近づいてはいけないんだとか。
しかしその禁を破って颯太の家へやってくる宗定さん、掟で喋れないので筆談で颯太に「おかえり」と告げる。かわいい。この時点でとんでもないかわいさを感じる。風貌から恐怖政治スパダリ大魔王を予想していたら大型わんこタイプだったのでギャップにきゅんとなる。そうだ、都志見さんは大型わんこのプロだった、と期待に胸を躍らせる。

共通ルートの終わりに、司を失って不安定になった颯太が宗定さんに連れられて鳥の宮へ。
(ここで愁・恭ルートだったら渡利に連れてかれるんだろうなと思う。)
鳥の宮は逢巳の中でも神聖な場所なので、周りの人間を押し切ってご隠居おばあちゃんとかを追い払って、とにかく颯太を自分のもとに匿おうとする宗定さん。愁に「童貞野郎」となじられてたのも納得の突っ走りっぷりがかわいい。
鳥の宮の颯太が与えられた白装束が伝奇エロゲで巫女が儀式でエロエロなことになるときのそれにしか見えなかったので、エロ来るぞ!と期待したけど結論から言うと直接的なエロは来なかった。なんか宗定さんにお経唱えられた颯太が乱れ喘いで「綺麗だった」とか言われる。う、うん。

その後いろいろあって昼ドラ的ななじりを受けつつ島のジジイとかに鈴村(颯太の家)の血は男を惑わす淫売の血とか言われる。
すごい。もう性別とか関係ねえ。受けだぞオラァ!!って世界に殴り掛かってる設定。ここで結構な目にあうけど颯太に心理的後遺症があまり無さそうなところもどうしよう感が募る。女だったらそうとうユルユルで大変なことになってた思うけど、人を惹きつけて煽っておいて自己認識がなんかおかしいので自分の心身について無頓着という恐怖のアンバランス、とても都志見文脈なので薄ら寒い納得を覚える。つまり逢坂壮五は文脈的にド受けであるということを再認識する。

島に帰り着いてからは宗定さんの監禁生活のスタート。
お前を閉じ込めて誰にも見せたくないとか言ってたのがガチのやつで若干の焦りを覚える。やはり昭和のスパダリ様だったのかもしれない。しかしこの状態で互いに恋心を認識していないので最悪な事態には至らず。壮絶に鈍い童貞野郎のご当主様と自己認識アンバランス受けたゃなのでなんとかなった。
颯太が監禁される離れは、宗定の故母・千恵子の幽霊と、血を流しながら笑ってる女の幽霊+それにじゃれつく灰色の猫の幽霊が出るようになる。千恵子はメチャクチャかわいいし松岡由貴の鈴を転がすような声も美しいので最高だったが、後者は勘弁してほしい。絵は出ないのでよかった。作中で名言はされていないけど、宗定の想像が産んでしまった想像上の母の姿(血を流す女)と宗定(それに必死でじゃれつく猫)?

宗定さんの島での立場を考え、逢巳を出ていく颯太。
お祭りで記者の先輩に逢巳当主は島の人に神として祀られるためか代々長生きできないと聞き、祭りで見た宗定さんの姿に涙を流す颯太(ド受け)。祭事の最中に人混みのなかで颯太の姿を見つけ、声を発さず口の動きだけで名を呼ぶ宗定さん(偶像からの私信)。

颯太の涙が気がかりで玄関先で傘さして帰りを待ってる宗定さんにはさすがにエ~~~~ッ!?///
となった。高まりすぎていったん部屋の掃除を始めてしまった。ここでやっと想いを告白しあってキスをする2人。ウキウキ両思いライフが始まるかと思ったら、宗定さんがこの思い出だけで一生生きていけるからありがとう、的な別れを切り出し「生まれたばかりの恋心が死ぬ(ここの表現がとても素敵だった)」。
選択肢は出るけど片方即バッドなので必然的に不倫のような関係を結ぶことに…雨の中で「いまいるここが最高だから、不幸になんてならない」って必死に抱き合う2人がめちゃくちゃ昼ドラ。

颯太の家で秘密の逢瀬を繰り返すようになる2人。ある意味ロマンチックではあるが亡くなったばかりの祖母の仏壇が普通にある前でイチャイチャしてるのなんとも言えない気分になる。
今度のデートで映画を見ようって話をして、膝に座った颯太を後ろから宗定さんが抱きしめて首にキスしたり舐めたりしてるのを颯太が振り返ってみてしまってアワワ…ってなるところがすごく良かったです。エロシーン本編より生々しかったです。お店屋さんごっこレストランごっこもかわいかった…こんな無邪気なのに…不倫みたいな関係性…っていう背徳感…。
デートの日に宗定さんが颯太の家の鍵を閉めようとしてぶっ壊してしまったのはすごいフラグって感じで背筋が凍えたけど、今振り返ってみると力の制御が効かないパワー系ゴリラ彼氏のカワイイ一面でもある気がする。
島人の通報や上記の流れもありデート中に浅倉さん(宗定さんの付き人)が踏み込んでくるのは約束された展開だったので、どうか最悪のタイミングでは来ないでくれと願ってたけどわりと最悪の瞬間に踏み込んでこられて、芸能人の不倫現場みたいなウワ~って感じになり、そりゃあ当人同士は純愛でも浅倉さんからしたらダメージは大きいよな~っていう、申し訳無さを抱えつつ昼ドラ極まれり展開でちょっと愉快になってくる。
翌日おしおきと称して玄関でガンガンやられて「らめえ、声が外に聞こえちゃうう」「構うものか」という人妻モノのような雰囲気に昼ドラノンストップジェットコースターに乗車してしまった恐怖に震えつつも、逢坂壮五で500回くらい妄想したことのあるシチュエーションだったのを思い出し、逢坂壮五の人妻力の延長線上にこういった世界線もあるに違いない系の思考回路になってくる。

一晩中そうして颯太の足腰を立たせなくして車を呼びつけて逢巳に持ち帰ろうとする宗定さん。
このまま逢巳入りしてしまうと妾として飼われるバッドエンド。離れに軟禁されて夏子に詰られたり千恵子に泣かれたり血をダラダラ流す女の幽霊にガン見されたりしながら宗定の結婚式の日を迎える。狂っているようで、正気に戻りたくない、と問題を先延ばしして地獄にズブズブと落ちていく感じが結構好きだった。宗定さんが心のない鬼畜攻めみたいになっててちょっと寂しかったけど颯太がザ・淫乱になってたのでそれなりに相性は良さそうでした。
車から逃げ出すと恭の助けが入り帰宅ルート。逃げる際に「キスしたいから目を閉じて」って言って宗定さんが正直に目を閉じた(童貞野郎どんだけピュアなんだよ!かわいすぎだろ!)すきに車の扉開けて出てく颯太のテクが女スパイみたいだなあと思いました。

祖母の葬儀を終え夜、ふたたび訪ねてきた宗定さんに扉を閉ざし、完全に拒絶する颯太。宗定の母・千恵子が夫・春貞の立場を守るための行動と重なる。颯太の色々な人間の魂の影響を受けてしまう体質(半身を失ってるから?)、巫女スペックの高さもまた最強受けたゃの素質と言える。生涯の中で愛を求めたたった2人にも拒絶される宗定さんは最高に可哀想な大型わんこ。

なんとなく平穏っぽいまま季節は晩夏~秋に。秋用の立ち絵衣装が用意されてて感動する。
このゲーム一枚絵より立ち絵のほうが全体的にクオリティが高いので、新規スチルが出るより立ち絵が増えるほうが嬉しい。
夏子が隠居婆に結婚したい相手・路夫のことを話したことでお婆の逆鱗に触れ、渡利当主・路夫と颯太が逢巳入りを命じられる。
婆の言葉に颯太が何も発せずにいると宗定が「逢巳当主は俺で終わらせる」と家に火を放ちバッドエンド。
颯太が「島の理はおかしい」と説き、体を貸す形で千恵子の言葉を婆にぶつけると状況が打開されハッピーエンド。ここの分岐は、鳥の宮の儀式で乱れた後に宗定に支えられた時に「照れて黙っている」か「笑ってごまかす」かの選択肢で決まるらしい。颯太の積極性で分岐してるのか?な?

朱野のきんとうか畑で千恵子の声を聞き、俺の本当の願いは最初からかなっていたと涙を流す宗定さんを見守り、最後は、島の掟を変えた宗定さんが颯太を追いかけて東京に出てきてデートに誘ってエンド。
島へ戻れなくなった千恵子の部屋からみた景色はカルタグラを思い出した。
伝奇ものにおいて島や館から解放されるというのは個別ルートにおける直球王道の形で美しいなー。宗定さんはかっこいいけどかわいいという最強のキャラクターで、どちらかというとかわいいダメ男で赤ちゃんなので母性本能をくすぐられるという都志見さんがお得意な人間だったようにも思う。終盤颯太がどんどん母性を開花させてってるように見えた。「電話にダウンロードしてくれ」「SNSでつながろう」「恋をして奇異になったことはあるか」あたりの…主に愁との会話のバブみがすごかった。
逢巳宗定のテーマが母との邂逅、とかそういった感じのものだからかな。どうかな。今後のルートが楽しみ。

未解決案件
・幼少期の宗定の首を締めた人間
・血を流す女の幽霊とじゃれつく灰色の猫(宗定と母と取れなくもないが、灰色の猫と愁をリンクさせる描写もアリ?読み違い?)
・逢巳の先々代も恋に狂い鬼のような人物になったという話

CHAOS;CHILD 切断による救済の物語

カオスヘッドの続編が出ると聞いて楽しみにしていたもののうっかり忘れ、今回たまたま5pbセールでお安くなっていたのでプレイした。
すごい。ヤバイほど面白かった。さすが俺達の5pb、俺達の千代丸(忘れてたけど)


カオスヘッドの続きの世界が見られただけでも嬉しかったけど、それ以上に単体の作品として素晴らしく、少年の成長物語であり、そして少女を救済するお話だった。

ネタバレ感想です。

 

 

尾上世莉架は明るく天真爛漫で誰からも好かれる女の子。ちょっと抜けてて(拓留が庇護欲を満たせるくらいに)、ちょっとバカで(拓留が自分の知識をひけらかすと「すごーい!」と驚いてくれるくらいに)、拓留と同じように都市伝説や不思議なことが好き(拓留が孤独を感じないくらいに)。

複雑な家庭環境だった拓留より悲惨な環境で育っていて(拓留が憐れめるくらいに)、拓留のことを「タク」と呼び「タク」のすべてを肯定する(拓留が自尊心を守れるくらいに)。いつも拓留の一番そばにいたい。だってタクのことが大好きだから。

そして、拓留の願いを叶えるためなら手を汚すことも身を投げ出すことも厭わない。拓留にとって都合のいいお人形。 なんでも望みを叶えてくれる美少女形ドラえもん

 

彼女の正体は人間ではなく、拓留が生み出した願望を叶えるために存在するイマジナリーフレンド(空想の友人、脳内の友達)。だからこの性格付けは当たり前といえば当たり前だけど、改めて心が痛い。つまりつまり、通常設定されたギャルゲーのヒロインまんまじゃん。

尾上は心地よいストレスのない非現実世界を作るためのシンボルフラッグのような存在で、その世界をギャルゲのテンプレ概念を持って受け止めるユーザーは擬似的に宮代拓留とイコールの存在になってしまう。

 

妄想科学ADVシリーズというか、カオスシリーズの主人公は、一般的な主人公らしい主人公に比べて脆く、痛々しく、弱い。カースト的にも生々しく非力なオタク層に属する。

拓留もなんだかんだ喚いては女の子によしよしコミュニケーションを取られる男で、来栖への反発なんかは赤ん坊の癇癪そのものだし、香月バッドエンドルートでは目の前に迫る怪物に怯えながら香月行け!やっつけろ!と叫び、拓留のために香月が命を落としても脳内モノローグでごめんの一言もなく絶叫するだけで、ウワ〜〜も〜〜この人どうしようもねえ〜〜、という絵に描いたような「俺ら」感が溢れている。

来栖は世話焼きママだし尾上も馬鹿なフリまでして思考読み取ってよしよししてくれるママだしダメ男製造工場みたいな環境。言い換えれば天国。

明らかに拓留に非があるシチュエーションでも拓留を攻撃する他者にタックルかます尾上とか、拓留の汗が染みたタオルに大喜びする尾上とか、その時点では擬音系幼馴染キャラぶってるけどなかなかキマってる女だな〜と思ってたけど、タク以外に生きる意味がない存在だったと知ってからはそれらが健気で愛おしくて仕方ないです。

 

そんな尾上と拓留の関係は共依存だった。

f:id:moromoroneko:20170220224956j:plain

Trueの拓留のセリフで気づいた。

拓留は、辛いことすべてから助けてほしい、誰かに必要とされる存在でありたい、孤独を埋めてほしい、承認欲求を満たしたい。

尾上は、拓留に必要とされたい、拓留に願われたことを全部叶えたい、拓留を自分だけのものにしたい、拓留を理解できるのは自分だけでありたい。

(自分がいちばんにタクを理解できていれば、拓留が他の女の子と恋仲?になっても死んでも構わない。相手の女より自分が優位であれば。でも来栖は拓留にとって数少ない唯一の存在の1人だから許せなかったんだろうなあ…来栖にズバズバ言い当てられてドロドロした感情吐き出す尾上が可哀想でかわいかった。絶対零度の残酷な声で来栖を煽りつつ拓留にはいつもの猫なで声で話しかけて高笑い。最高にかわいい)

この互いの気持ちがぴったりとハマって、2人の関係は閉じたものになってしまった。一見居心地がよく最高に安心できる世界だけど、そこに成長はなく、閉じこもれば発作的にまた同じ悲劇を繰り返し一緒に堕ちていくだけ。

 

拓留が共通ルートの最後で尾上にディソードを振りかぶったときに奪ったものは尾上の記憶であり、拓留と尾上の関係性でもある。

2人の結びつきを切断することで、もとは1人の人間だった2人をそれぞれ別個の人間として自立させた。拓留はこの判断を下した時点で、弱くて喚いているだけの守られていた少年ではなくなる。

共依存世界の破壊がもたらしたものは、人形としてしか生きられなかった尾上世莉架の救済で、また、常に誰かに助けを求めて苦しんでいた宮代拓留へ、成長という強さを与える儀式でもあった。

 

f:id:moromoroneko:20170220225014j:plain

拓留はニュー尾上には尾上のことを「親友」と告げていたが、和久井に対峙するときは「好きな子」と言っている。

尾上に対して「親友」という表現を使うのがすごく、すごく良い。拓留が冷静であろうとした気持ちや今の尾上への思いやりや深い愛が伝わってきて。和久井にぶつけた言葉は自分を奮い立たせるためのエゴみたいなもので、尾上(自分で自分に縛り付けてしまった尾上)のことを好きだったのはエゴだと、拓留が認識しているようでせつない。でもそれは不器用な彼なりの優しさであり最大限の情だろうと思う。

拓留が一貫して地の文で「世莉架」と下の名前で呼んでいた女性は尾上だけ。最初から、尾上世莉架は宮代拓留にとって“特別な女の子”だった。

  

どうか尾上拓留のことを思い出してほしい、タク!と呼びかけて手を引いてほしい、2人が恋をする甘い夢を見せてほしい、と思って読み進めてしまったけど、最後の別離が物語の締めとして静かで美しく、ああそうか、そうでないと拓留が苦しみながら断ち切った意味がないもんな、と納得できた。大人になるってせつないことだなあ。

まだまだ浸っていたいし私自身はなかなか大人にもなれないので、ラブちゅっちゅの発売が楽しみです。