「きんとうか」宗定ルートを終えた

アイドリッシュセブンのストーリー構成というか人間構造、社会構造みたいなものにはまったので、同じライターさんの作品ということでプレイ。
公式サイトの人物紹介見ても誰がどうという感想も特に抱いていなかったので(良い年下攻めがいることは気になった)、とりあえずメインヒロインっぽい宗定さんから攻略していくことにした。おいしいものは後回しにしたいタイプなので年下攻めは後に回す。

現世から切り取られたように風習を大事にしてる島での祭事とか禁忌とかに関する情報がバンバン出てきてテンションが上がる。すごい。ひぐらしとか死体が歩き回ってないSIRENみたいな世界観、とても好き。BLゲームでこういう雰囲気をあまり見たことがない気がする。

東京で暮らす鈴村颯太が、祖母が亡くなったのをきっかけに子供の頃に夏が来るたび帰省していた島に戻るところから物語が始まる。

公式サイトで気になった年下攻めは恭くんと言って、実直で血の気が多くてでも世話焼きで正義感が強くてめちゃくちゃいい子だった。しかも照れ屋。照れ顔の立ち絵がすごくかわいい。なんてかわいいんだ。主人公の颯太が魔性の女みたいな相手の軟かいところに絶妙に触れて気を持たせてフッと離れるような返答をするクソアマタイプなので(魔性属性なのは公式設定だと後に知って笑う)、そういうのにいちいち照れて「ばっ…!」とか言うのがかわいすぎる。


攻略キャラが島を統治する2大一族である逢巳・渡利の当主それぞれ、渡利の次男である恭、謎の男(司)、というバランスなので、渡利当主の愁と弟の恭の差別化はどうするんだろうと思っていたら恭は颯太の家に寝泊まりする展開でなるほど!となる。当主それぞれが島のしきたりを熟知している長であるのに対して、島を出て大学に通っている「染まりきってない」恭は、日常の象徴みたいな立ち位置なのかも。

颯太、恭、司が一緒に暮らして、司が消えて3人の共同生活が解消されるまでが共通ルートだと思う。司の正体は1周目の時点でだいぶわかるけど、伝奇ものっぽくて気になるヒキでおわり。自我の入れ替わりでゴチャゴチャになってたからミスリードかもしれないが、司が本物の颯太で、今颯太と名乗っている人物が違うなにかなのでは…とも思ったけどたぶん2人とも颯太だと思う。BLでニーアやアビスのような話だったらつらすぎる。

逢巳宗定さんが正式に登場するのは結構遅い。
島では葬式は穢れにあたるため、逢巳の方々は近づいてはいけないんだとか。
しかしその禁を破って颯太の家へやってくる宗定さん、掟で喋れないので筆談で颯太に「おかえり」と告げる。かわいい。この時点でとんでもないかわいさを感じる。風貌から恐怖政治スパダリ大魔王を予想していたら大型わんこタイプだったのでギャップにきゅんとなる。そうだ、都志見さんは大型わんこのプロだった、と期待に胸を躍らせる。

共通ルートの終わりに、司を失って不安定になった颯太が宗定さんに連れられて鳥の宮へ。
(ここで愁・恭ルートだったら渡利に連れてかれるんだろうなと思う。)
鳥の宮は逢巳の中でも神聖な場所なので、周りの人間を押し切ってご隠居おばあちゃんとかを追い払って、とにかく颯太を自分のもとに匿おうとする宗定さん。愁に「童貞野郎」となじられてたのも納得の突っ走りっぷりがかわいい。
鳥の宮の颯太が与えられた白装束が伝奇エロゲで巫女が儀式でエロエロなことになるときのそれにしか見えなかったので、エロ来るぞ!と期待したけど結論から言うと直接的なエロは来なかった。なんか宗定さんにお経唱えられた颯太が乱れ喘いで「綺麗だった」とか言われる。う、うん。

その後いろいろあって昼ドラ的ななじりを受けつつ島のジジイとかに鈴村(颯太の家)の血は男を惑わす淫売の血とか言われる。
すごい。もう性別とか関係ねえ。受けだぞオラァ!!って世界に殴り掛かってる設定。ここで結構な目にあうけど颯太に心理的後遺症があまり無さそうなところもどうしよう感が募る。女だったらそうとうユルユルで大変なことになってた思うけど、人を惹きつけて煽っておいて自己認識がなんかおかしいので自分の心身について無頓着という恐怖のアンバランス、とても都志見文脈なので薄ら寒い納得を覚える。つまり逢坂壮五は文脈的にド受けであるということを再認識する。

島に帰り着いてからは宗定さんの監禁生活のスタート。
お前を閉じ込めて誰にも見せたくないとか言ってたのがガチのやつで若干の焦りを覚える。やはり昭和のスパダリ様だったのかもしれない。しかしこの状態で互いに恋心を認識していないので最悪な事態には至らず。壮絶に鈍い童貞野郎のご当主様と自己認識アンバランス受けたゃなのでなんとかなった。
颯太が監禁される離れは、宗定の故母・千恵子の幽霊と、血を流しながら笑ってる女の幽霊+それにじゃれつく灰色の猫の幽霊が出るようになる。千恵子はメチャクチャかわいいし松岡由貴の鈴を転がすような声も美しいので最高だったが、後者は勘弁してほしい。絵は出ないのでよかった。作中で名言はされていないけど、宗定の想像が産んでしまった想像上の母の姿(血を流す女)と宗定(それに必死でじゃれつく猫)?

宗定さんの島での立場を考え、逢巳を出ていく颯太。
お祭りで記者の先輩に逢巳当主は島の人に神として祀られるためか代々長生きできないと聞き、祭りで見た宗定さんの姿に涙を流す颯太(ド受け)。祭事の最中に人混みのなかで颯太の姿を見つけ、声を発さず口の動きだけで名を呼ぶ宗定さん(偶像からの私信)。

颯太の涙が気がかりで玄関先で傘さして帰りを待ってる宗定さんにはさすがにエ~~~~ッ!?///
となった。高まりすぎていったん部屋の掃除を始めてしまった。ここでやっと想いを告白しあってキスをする2人。ウキウキ両思いライフが始まるかと思ったら、宗定さんがこの思い出だけで一生生きていけるからありがとう、的な別れを切り出し「生まれたばかりの恋心が死ぬ(ここの表現がとても素敵だった)」。
選択肢は出るけど片方即バッドなので必然的に不倫のような関係を結ぶことに…雨の中で「いまいるここが最高だから、不幸になんてならない」って必死に抱き合う2人がめちゃくちゃ昼ドラ。

颯太の家で秘密の逢瀬を繰り返すようになる2人。ある意味ロマンチックではあるが亡くなったばかりの祖母の仏壇が普通にある前でイチャイチャしてるのなんとも言えない気分になる。
今度のデートで映画を見ようって話をして、膝に座った颯太を後ろから宗定さんが抱きしめて首にキスしたり舐めたりしてるのを颯太が振り返ってみてしまってアワワ…ってなるところがすごく良かったです。エロシーン本編より生々しかったです。お店屋さんごっこレストランごっこもかわいかった…こんな無邪気なのに…不倫みたいな関係性…っていう背徳感…。
デートの日に宗定さんが颯太の家の鍵を閉めようとしてぶっ壊してしまったのはすごいフラグって感じで背筋が凍えたけど、今振り返ってみると力の制御が効かないパワー系ゴリラ彼氏のカワイイ一面でもある気がする。
島人の通報や上記の流れもありデート中に浅倉さん(宗定さんの付き人)が踏み込んでくるのは約束された展開だったので、どうか最悪のタイミングでは来ないでくれと願ってたけどわりと最悪の瞬間に踏み込んでこられて、芸能人の不倫現場みたいなウワ~って感じになり、そりゃあ当人同士は純愛でも浅倉さんからしたらダメージは大きいよな~っていう、申し訳無さを抱えつつ昼ドラ極まれり展開でちょっと愉快になってくる。
翌日おしおきと称して玄関でガンガンやられて「らめえ、声が外に聞こえちゃうう」「構うものか」という人妻モノのような雰囲気に昼ドラノンストップジェットコースターに乗車してしまった恐怖に震えつつも、逢坂壮五で500回くらい妄想したことのあるシチュエーションだったのを思い出し、逢坂壮五の人妻力の延長線上にこういった世界線もあるに違いない系の思考回路になってくる。

一晩中そうして颯太の足腰を立たせなくして車を呼びつけて逢巳に持ち帰ろうとする宗定さん。
このまま逢巳入りしてしまうと妾として飼われるバッドエンド。離れに軟禁されて夏子に詰られたり千恵子に泣かれたり血をダラダラ流す女の幽霊にガン見されたりしながら宗定の結婚式の日を迎える。狂っているようで、正気に戻りたくない、と問題を先延ばしして地獄にズブズブと落ちていく感じが結構好きだった。宗定さんが心のない鬼畜攻めみたいになっててちょっと寂しかったけど颯太がザ・淫乱になってたのでそれなりに相性は良さそうでした。
車から逃げ出すと恭の助けが入り帰宅ルート。逃げる際に「キスしたいから目を閉じて」って言って宗定さんが正直に目を閉じた(童貞野郎どんだけピュアなんだよ!かわいすぎだろ!)すきに車の扉開けて出てく颯太のテクが女スパイみたいだなあと思いました。

祖母の葬儀を終え夜、ふたたび訪ねてきた宗定さんに扉を閉ざし、完全に拒絶する颯太。宗定の母・千恵子が夫・春貞の立場を守るための行動と重なる。颯太の色々な人間の魂の影響を受けてしまう体質(半身を失ってるから?)、巫女スペックの高さもまた最強受けたゃの素質と言える。生涯の中で愛を求めたたった2人にも拒絶される宗定さんは最高に可哀想な大型わんこ。

なんとなく平穏っぽいまま季節は晩夏~秋に。秋用の立ち絵衣装が用意されてて感動する。
このゲーム一枚絵より立ち絵のほうが全体的にクオリティが高いので、新規スチルが出るより立ち絵が増えるほうが嬉しい。
夏子が隠居婆に結婚したい相手・路夫のことを話したことでお婆の逆鱗に触れ、渡利当主・路夫と颯太が逢巳入りを命じられる。
婆の言葉に颯太が何も発せずにいると宗定が「逢巳当主は俺で終わらせる」と家に火を放ちバッドエンド。
颯太が「島の理はおかしい」と説き、体を貸す形で千恵子の言葉を婆にぶつけると状況が打開されハッピーエンド。ここの分岐は、鳥の宮の儀式で乱れた後に宗定に支えられた時に「照れて黙っている」か「笑ってごまかす」かの選択肢で決まるらしい。颯太の積極性で分岐してるのか?な?

朱野のきんとうか畑で千恵子の声を聞き、俺の本当の願いは最初からかなっていたと涙を流す宗定さんを見守り、最後は、島の掟を変えた宗定さんが颯太を追いかけて東京に出てきてデートに誘ってエンド。
島へ戻れなくなった千恵子の部屋からみた景色はカルタグラを思い出した。
伝奇ものにおいて島や館から解放されるというのは個別ルートにおける直球王道の形で美しいなー。宗定さんはかっこいいけどかわいいという最強のキャラクターで、どちらかというとかわいいダメ男で赤ちゃんなので母性本能をくすぐられるという都志見さんがお得意な人間だったようにも思う。終盤颯太がどんどん母性を開花させてってるように見えた。「電話にダウンロードしてくれ」「SNSでつながろう」「恋をして奇異になったことはあるか」あたりの…主に愁との会話のバブみがすごかった。
逢巳宗定のテーマが母との邂逅、とかそういった感じのものだからかな。どうかな。今後のルートが楽しみ。

未解決案件
・幼少期の宗定の首を締めた人間
・血を流す女の幽霊とじゃれつく灰色の猫(宗定と母と取れなくもないが、灰色の猫と愁をリンクさせる描写もアリ?読み違い?)
・逢巳の先々代も恋に狂い鬼のような人物になったという話